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卵子提供は胚盤胞まで培養する技術、PGSの進歩、胚の凍結技術(ガラス化法)が支えている

         

エッグドナーさんからの採卵

アクトワン・ActOne の卵子提供プログラムでは、エッグドナーさんに、日本のクリニックで、感染症の有無、ホルモン値の検査、子宮頸がんの検査、卵巣のチェックなど、たくさんの項目の事前検査を受けてもらいます。
その結果が良好であれば、エッグドナーさんは、ピルで生理周期を整えて海外へ渡航します。
ドナーさんはその後約2週間、排卵誘発をして、卵子の採取に臨みます。ここで採取される卵子は、ドナーさんにもよりますが20個から40個にもなります。
採取された卵子は、成熟卵と未成熟卵に分けられて、成熟卵のみが、予め凍結されている、レシピエントご夫婦のご主人様の精子と顕微授精されます。
ここで受精した卵子は、インキュベータの中で5日から6日培養されて胚盤胞となります。育った胚盤胞は、PGSのために組織の一部を採取した後にすべて凍結されて保管されます。

ハワイクリニック機材6

受精卵を胚盤胞まで育てるのはとても難しい

アクトワンの提携する海外のクリニックでは、前述のように、受精卵はすべて胚盤胞まで育てるべく培養されます。
受精した胚は48時間後には4細胞、72時間後には分割して8細胞になります。体内とは異なった環境で、胚を長期に培養して胚盤胞まで培養することは、実はとても難しいのです。
受精卵の中ではさまざまな生化学的な変化が起こっていて、胚の成長の過程で糖や他のエネルギー源やアミノ酸を培養液に加えてあげる必要があります。
この過程がとても難しいが故に、現在でも不妊治療のクリニックで、Day2やDay3の受精卵を子宮に戻してしまうということが行われています。
Day2やDay3の受精卵よりも、胚盤胞にまで育った受精卵の方が着床率も妊娠率も高いのは言うまでもないことです。
なぜならば、自然妊娠で着床が起こるのは5日から6日目の受精卵で、2日や3日目の受精卵は着床できないからです。

新鮮胚よりも凍結胚が良い理由はこんなにある

実は新鮮胚と呼ばれる凍結しない受精卵を使うよりも、凍結された凍結胚を使ったほうが、妊娠率が高いのです。
なぜこんなことが起こるのでしょうか?
常識で考えても分かるように、受精卵も凍結すれば多少なりとも受精卵の質は低下します。それはみなさんが、お肉や魚を冷凍して解凍する様子を見ていれば、よく分かるはずです。それにもかかわらず凍結胚の方が妊娠率が上がるのは、凍結により受精卵を子宮に戻すタイミングをコントロールできるからです。
アクトワンの卵子提供プログラムでは凍結胚移植にあたって、奥様の子宮内膜の調整には万全を期します。奥様にはエストレースやメドロール等を服用していただいて、子宮内膜が十分な厚さになるように調整するのです。
子宮内膜が厚さ6ミリに満たない場合には、残念ながら凍結胚の移植スケジュールはリセットされるくらいです。
最近は奥様もお仕事をしている方が多く、なかなか休暇が取れません。こんな時でも、奥様の都合の良いタイミングで、奥様の生理周期を調整して、ベストコンディションで胚移植が行われ、子宮内膜に着床させることが可能になったのは、受精卵が凍結されているからです。
また、凍結胚移植による妊娠では、子宮外妊娠の発生頻度が新鮮胚移植よりも圧倒的に低くなることが判っています。
新鮮胚移植では、排卵誘発→採卵→体外受精→受精胚の移植の工程が連続的に行われるために、胚を子宮に移植するタイミングが、女性ホルモンの血中濃度のとても高い時期に重なるためとも言われています。この人為的に高められたホルモン濃度が何らかの影響を与えて、子宮外妊娠につながる可能性があるのです。
それだけではありません。凍結胚移植では、早産率が低くなり、低体重児の出生の比率が小さくなるなど、出生する赤ちゃんにも良い影響を与えています。
卵子提供プログラムに関わらず、日本における不妊治療でも、このように受精卵を凍結保存するのが現在では主流となっていて、凍結胚移植の方が新鮮胚移植よりも10%も妊娠率が高くなっています。
今では日本において体外受精で産まれてくる子どもたちの内76%もの子供が凍結胚移植によって生まれてきているのです。
生まれてきた子どもたちの内、3/4が医療機関のマイナス196℃に冷やされた液体窒素タンクの中で、一定期間過ごしていたという事を想像すると、これはちょっと驚きです。

凍結胚保管の様子

胚のガラス化法ってどういうの?

それでは胚の凍結はどのように行われるのでしょうか?2006年にガラス化法(超急速ガラス化保存法)が登場しました。ヴィトリフィケーションと言います。
これは画期的な胚の凍結方法で、以前は凍結胚を融解すると、5個~20個に1個ぐらいの割合で受精卵は死んでしまいましたが、このガラス化法では胚が死んでしまうことはほとんどありません。
人間の身体は約60%が水であるといわれます。細胞も同様で、そのほとんどは水分です。このために細胞を凍らせると、細胞内に氷の結晶ができます。水は液体よりも氷になった方が体積が増えるので、氷が細胞壁を壊してしまって細胞は死んでしまうのです。受精卵も同じ細胞なので、普通に凍らせると壊れて死んでしまいます。
これを防ぐために、まず胚の内部の水を凍結保護物質(CPA)に置き換えます。胚を凍結保護物質の溶液に浸すと、胚と溶液との浸透圧の差によって、胚の中の水分が漏れ出し、胚の中には凍結保護物質が浸透します。
これにより細胞内の粘性が高まるために胚の中に結晶が形成されません。凍結保護物質は氷の結晶をつくることなく、ガラスのような状態で固まるために体積が膨張せず胚が破壊されないのです。
そのためにこの方法はガラス化法と呼ばれます。
受精卵が凍結保護物質で満たされると(細胞内のCPA濃度は50%以上に高める必要がある)、今度は一気に液体窒素へと投入して胚を凍結させます。
実際には受精卵はそれぞれ胚の質や、発育の状態により細胞膜の透過性が異なるために、胚ごとに最適な浸透処理が求められます。
受精卵はそれぞれに最適な条件での凍結保存が必要ですが、ガラス化凍結法ではそれが可能です。
胚培養士(エンブリオロジスト)はその状態を確認しながら胚を凍結させます。こうして凍結された胚は半永久的に保存することができます。

アクトワン・ActOne では、複数凍結保管された受精卵によって、1人目はもちろん、その後時期やタイミングをみながら、2人目、3人目を妊娠をすることができます。
それが可能なのは、このガラス化法という胚の凍結保存方法があるからなのです。
このガラス化法は現在では、受精卵のみならず、様々な細胞や骨髄バンクなどでも使われて、広く応用されています。

最新の技術が多胎妊娠を防ぐ

こうしてPGSと胚盤胞まで培養した受精卵を凍結保管することでの、大きなメリットは、多胎妊娠の発生を防ぐことが出来るという点にもあります。卵子提供プログラムでも、以前には体外受精の成功率を上げるために、複数の胚を子宮に移植するということが行われていました。複数の胚を移植すれば、双子や三つ子などの多胎妊娠となる可能性があります。
多胎妊娠は早産や未熟児の生まれる可能性が高いのです。多胎妊娠では、この280日に及ぶ妊娠期間を維持できない可能性がとても高いからです。
WHOによれば、妊娠期間は最終生理日から出産までを280日としています。(最終生理日から排卵までは14日ですから、受精から266日後に出産するという計算です。)
多胎妊娠は生まれてくる赤ちゃんにとっての大きなリスクとなるだけでなく、母体にも重大なリスクとなります。
PGSと胚の凍結技術の進歩は多胎妊娠のリスクを軽減するという恩恵を、卵子提供プログラムを受けるレシピエントご夫婦にたらしたのです。

凍結された受精卵はどうやって融解する?

凍結された胚を使った方が妊娠率は上がります。凍結された胚は半永久的に保存ができます。胚が凍結保管されているので、レシピエントの奥様は万全の準備を整えて、移植に臨むことができます。子宮内膜の状態もとても良好になるようにホルモン剤を使って調節していきます。移植の際には凍結された胚盤胞は融解されて、奥様の子宮に移植されます。
それではマイナス196度に凍結された受精卵をどのように融解するのでしょうか?
ガラス化法では、受精卵を凍結するにあたって、凍結保護物質(CPA)を胚に浸透させる必要がありました。なので、凍結胚の細胞内にはCPAが高濃度で存在することになります。
このような状態の細胞を通常の培養液に入れると、細胞外から大量の水分が中に流入して、細胞は膨張して破裂してしまいます。これを浸透圧障害といいます。
それを防ぐために、凍結胚の融解のためには、濃度の違う4段階の融解液を用意します。濃度の違う融解液に順番に入れることによって、浸透圧障害を防止するのです。
4段階の融解液の最後は培養液で、最終的には細胞内の凍結保護物質はすべて培養液と入れ替わるのです。
凍結胚融解のためには他にも重要なことがありあます。それは温度です。
温められて細胞がガラス化(固体)から液体へと変化する時に、細胞内には液体と固体が混在することになります。この時のわずかな体積差が、脱ガラス化時の亀裂(クラック)を発生させることがあるのです。透明帯や細胞質のクラックを防止するためには、ガラス化された胚は急速に加温する必要があります。このために凍結胚は37度に温められた融解液の中に素早く浸さなければなりません。
融解された胚は、驚くことに、すぐに成長を再開します。
まるで生命の神秘です!
この胚の発育によって、融解された胚が生きているか否かの判断ができるのです。

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最新のテクノロジーが卵子提供プログラムを支えている

融解された胚盤胞は、すぐにお母さんの子宮に移植されます。移植された胚は黄体ホルモンの働きによってふかふかになったお母さんの子宮内膜に着床して、これから元気に成長していくことになるのです。
卵子提供プログラムは、このように最新のテクノロジーによって成り立ち、支えられています。エッグドナーさんからの卵子の採卵、顕微授精、胚盤胞と呼ばれる状態までの胚の培養、着床前診断(PGS)、ガラス化法による胚盤胞の凍結、胚融解、レシピエントの奥様への移植。これらすべての過程で最新の技術や療法が使われるのです。
このような理由で、卵子提供には信頼できる優秀なクリニックが求められます。アクトワン・ActOneの提携する海外4か所のクリニックはどれも素晴らしく優秀なクリニックですから、安心して卵子提供プログラムを進めることができます。
最新の理論も、最新のテクノロジーも、最新の治療法もすべてプログラムに取り入れられています。そしてそれは最新の研究に基づいて常に進歩していますので、クリニックのプロトコルも適切な時期に変更されます。
現在も高い成功率を誇るエッグドナーの協力による卵子提供プログラムは、このような絶え間ない進歩と努力によって、さらに改善されていくことでしょう。