マレーシアの現地スタッフがお送りする、マレーシア通信#7
世界遺産の街“マラッカ”は、マレーシアの首都クアラルンプールから車で約2時間という好立地もあり、世界中の人々が絶えず訪れる、美しく魅力的な街です。
その魅力を一言で表すならば、
「そこへ行けばマレーシアを知ることができるから」。
マレーシアの正史は、14世紀末のマラッカ王国の成立に遡ります。日本でいえば室町時代。当王国はその頃すでに、アラブ諸国、アジア各国を結ぶ貿易のハブとして栄えていました。
国王は、タイをはじめとする周辺諸国による脅威に備え、明国(現中国)の姫を妻に迎え、アラブとの貿易を円滑に進めるためにムスリムに改宗するなど、諸外国との外交に力を注いでいたと言われています。当時の交易の対象は、胡椒・クローブ・ナツメグなどのスパイスや絹、麻、陶器などで、マラッカ王国は「海のシルクロード」の中継地として栄えていました。
その後、1511年のポルトガルによる占領を皮切りに、オランダ、イギリス、日本、再びイギリスの統治時代を踏まえたマラッカ。この地には、各時代の名残がしっかりと残っています。
マレーシア最古のイスラム教寺院・仏教寺院・ヒンドゥー寺院・カソリック教会・プロテスタント教会、ポルトガルが建造した要塞跡、フランシスコ・ザビエルゆかりのセントポール教会跡、オランダ統治時代を偲ぶレンガ色の旧総督邸、英国女王に捧げられた噴水、日本統治時代の逸話の残るシーク教寺院などが見事に現存。
セントポール教会を除く各寺院はすべて現役として、地元の信者や観光客を温かく迎え入れています。
これらの寺院はすべて、半日で歩いて回れるほどの小さな観光地区に立地し、イスラム教寺院、ヒンドゥー寺院、中国寺院が同じ通りに隣り合わせに立つ光景も見られます。
他の国々では歴史上、支配者が変わるたびに他の宗教施設を破壊してきたケースが多いため、いくつもの異なる宗教施設が古来より共存する珍しい風景は必見の価値があります。
「マレーシアは多民族・多文化なので、多種多様を認める優しい国」
と表現されますが、他民族・他文化を長年に渡り受け入れてきた努力の末、多様性を認める優しい国となったのだと、マラッカを訪れることで理解することができ、同時に、マレーシアは600年も前から“グローバル先進国”だったのだと思い知らされます。
マラッカは年中通して気候にも恵まれているため、澄み渡る青空も魅力の1つです。
悠久の歴史に思いを馳せながら、多彩な建築物と青空のコントラストを楽しめるマラッカ。
今では世界中の芸術家を魅了し、さらにはグルメ天国としても知られてきています。