卵子提供における人権問題について

       

海外では20年も前から行われており、日本でも民間の卵子バンクが開設され年々利用者を増やしつつある卵子提供による体外受精。

近年では、国内の卵子バンク第一号であるOD-NETで、日本国内で初めて卵子提供による受精卵作製に成功したという発表もあり、今後不妊治療の方法の一つとしてより一般的になることが考えられます。

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しかし、卵子提供はいまだ日本ではなじみが薄く、何かと問題が多いのが実情です。
特に大きいものが、人権問題です。

日本では、卵子提供に関する法整備が十分ではありません。
たとえば、卵子提供をした女性と出産した女性、どちらを親とするかは、日本の法律では明確に規定されていません。
自民党では、卵子提供や代理出産の場合は産んだ女性を母親とする民法の特定法案の国会提出を目指していますが、成立の見通しは立っていない状況です。
また、卵子提供によって産まれた子供自身の人権問題も大きな課題となっています。

現在、精子提供によって産まれた子供には、遺伝上の父親を知る仕組みはありません。
そのため、成人してから事実を知るケースが多く、子供を深く悩ませる要因となっています。

卵子提供に関しては、日本初の卵子バンクであるOD-NETでは子供の「出自を知る権利」を認めており、就学前の告知や、子供が15歳以上になった際には希望に応じて、卵子提供者の指名や各種の情報を開示するとしています。
そのため、子供が希望すれば卵子提供者への面会も可能になります。

しかし、子供の人権問題にはまだまだ大きな課題があります。
卵子提供にかかわる法整備が十分ではない状況で産まれてくる子供は、法的地位に安定性がなく、その子供を含め両親や卵子提供者への人権保護が行き届かない恐れがあります。

こういった状況を回避するためにも、卵子提供に関する法整備を急ぎ、産まれてくる子供や両親、卵子提供者の人権問題をクリアにすることが急がれます。

卵子提供は、日本ではまだ理解が薄くたくさんの偏見や問題をはらんでいることも事実です。
しかし、数ある不妊治療法の中では最も高い妊娠成功率を誇り、不妊に悩む多くのご夫婦にとっては最後の砦といっても過言ではない治療法です。

今回、OD-NETでの受精卵作製をきっかけとして、卵子提供や精子提供のような生殖補助医療による出産にかかわる法整備が急がれるでしょう。

卵子提供による体外受精を望むすべてのご夫婦のために、人権問題解消に向けて社会全体が働きかける必要があるでしょう。